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景観を守ろうとした市長が損害賠償?「国立マンション訴訟」を考える

市川緑の市民フォーラム 中島 行雄

中央線国立の駅を降りると、大きな幅員の道路が一直線に伸びている。この両側には、広い緑道がとられておりサクラ・イチョウなどの並木道がずっと先まで続いている。その後ろには、古くからある店々が立ち並んでおり、オシャレな喫茶店などもある。「こんな美しい街があるのだ!」。初めて歩いた時私は感動した。

しかし、一つだけ、低層の建物ばかりのこの道沿いに景観を乱す無粋な建築物が建っている。高さ44メートル、戸数353戸。明和地所の建てたマンションである。そして、この建物に関連して、建設当時の市長の上原公子(うえはらひろこ)さんは、個人的に市へ4,500万円の賠償金を支払うことを求められている。こんな大金がどこから出てくるというのだ。

1999年4月、上原さんは、国立の景観保護を公約にして、国立市長に当選した。そして、この年の夏、明和地所(以下業者という)によってマンション計画が持ち上がった。これに対して、住民の間にマンション建設反対運動が起こった。業者は、東京都の建築確認を受けて工事に着手した。しかし、住民側は市長に高さを20メートルに制限する地区計画づくりを要望し、上原市長はそのための条例を作った。

これから、このマンションを巡って、①住民対業者、②業者対国立市、③反上原派の住民対国立市、④新市長対上原さんとの間で、いくつかの訴訟が提起される。この訴訟の経過はわかりにくいので省略するが、結果は次のとおりである。

上記の①の訴訟では、地区計画に基づいてマンションの高さを20メートルに制限すべきだという住民の主張が、1審では認められるが、2審以降では認められなかった。

②の訴訟では、市が業者の営業を妨害して損害を与えたとして3120万円の賠償金を支払うよう決定される。市はこれを支払うが、業者はこの全額3120万円を市に寄付してくる。

③の訴訟では、市が②の賠償金を払わなければならなくなったのは、上原市長の責任だとして、反上原派の住民が住民訴訟で、上原さんにこの金額を市に支払うよう求め、これが確定してしまう。市の賠償金と業者の寄付は別物だとでもいうのだろうか。

④の訴訟は、上原さんが上記の3120万円の支払いを拒否したので、反上原派の新市長が支払いを求めた訴訟で、上原さんが支払うように、2016年12月に確定する。ただし、1審の東京地裁では新市長は敗訴した。

こうして、上原さんは延滞金も含めて4500万円の賠償金?を市に払うことになった。美しい国立の町並みを守ろうとがんばったのに。この経過を見て気になるのは、まず、市民の心を無視した乱暴な業者の姿勢である。業者に追随する住民や新市長にも疑問を感ずる。業者側に立つ東京都の態度にも問題がある。また、日本の司法は一体どうなっているのか。

そんな中、「くにたち上原景観基金1万人の会」は「くにたちの景観はオール市民で守ったのだから、元市長に賠償金は払わせない」と支援活動を始めた。6月19日現在で39,459,993円集まっている。金利を含めて5000万円を目標に集めているが、現在78.9%に達している。目標までもう少しですが、心ある方は、是非寄付をお願いいたします。

【振込先】ゆうちょ銀行振替口座(郵便振替) 口座番号:00120-7-696771

口座名称:上原基金1万人の会