環境と防衛は超党派で

大藏八郞

(北国分2丁目 セイブグリーン・イチカワ代表)

緑豊かな町―市川の自然と、北国分の風致に魅せられて東京から引っ越してきたのが40年前の1983年でした。移り住み始めてから8年経った1991年に北国分に住む千葉大教授(考古学)麻生優氏の「身近な森林をもっと大切に」という新聞投稿(今は購読を止めている朝日新聞の「トークルーム」)に接しました。「市川市北国分の森を私はどうしても守りたい」と結ばれたこの記事によって初めて北総線開通に伴う区画整理事業による北国分駅前の樹林帯が危機に瀕していることを知った次第です。麻生教授は「樹齢100年の古木を含む3500本以上を伐って新しく公園や道路を造る意味がどこにあろう」と主張し、また次のように仰いました。

  • 赤松、黒松、イヌシデ、コナラなど数十種類の樹々、鵯、椋鳥、ツミ、大鷹、キジバトなど沢山の野鳥が飛び交う雑木林こそ縄文時代以来の伝統的な森の姿。
  • 森林保護の大切さは何もアマゾン河流域や東南アジアの熱帯雨林に限らない。この日本の身近な森が危ない、いや、市川の森が危ない。
  • マスメディアは外国の森林保護を訴えることはあっても、本音で身近な森の保護を採りあげることが少ない。
  • 日本が国際社会で信頼されるには自国の環境対策に真剣に取り組まねばならない。

この言葉が、麻生教授の亡き後、30年以上経った今も全く変わらずに生きているのです。

当時は、外環反対運動は未だ知られず、「北国分の森を守る会(麻生直子代表)」と「山水会(三宅幹夫代表)」が小沢前市議、海津市議、板橋市議を巻き込んで、当時の高橋国夫市川市長に強く抗議して伐採を一時中止させましたが、既に樹齢50年を超える大木50本余が切り倒されており、最終的に3000本もの樹木が失われました

しかし4000人市民の署名を集め、会社勤めの傍らで全力投球はできませんでしたが、小生も一臂の力を貸した結果でしょうか(①「北国分の森を守る運動へのご協力のお願い」「Q&A」を作成し、②国内の自然保護団体、芹洋子、東山魁夷など著名人の50か所以上へ配布。➂「全国自然通信」へ掲載、④千葉県沼田知事への緊急要望書提出、⑤市川よみうり、市川ジャーナルへの記事掲載、⑥日本自然保護協会沼田会長へ協力依頼等々・・・当時思い付くあらゆる手段を講じました)       11,568㎡の樹林が守られ、「多くの住民の手で北国分の森は残った」と新聞は評価し、「生ぬるい運動と言われようと、あれっぽっちと言われようと、ここで終わりとなりました」という悲痛なメッセージが麻生代表から届き、「幸いにも命のを長らえた樹木をこれからも大事に見守っていきたい、そして風致地区にふさわしい町作りが出来ますよう願っています」と1992年4月に総括されました。

この手法は、30年以上経った今も全く変わらずに有効と思います。但し真に有効に結果をだすためには、左系だけでなく中立、右系、保守系も一緒になって大同団結して共同歩調をとることが何より重要です。国民の生命財産を守る国防と同様に、住民の生命健康を守る環境対策にもイデオロギーや党利党略は無縁の筈です。

2000年から日本を離れ、11年の北米滞在から帰ると、市川の緑地は明らかに貧しく衰えており失望しました。本来であれば我々一般住民が騒ぎ立てずとも、欧米先進国のように行政が、すなわち市川市が、先手を打って緑を保護するのが筋ですが、全く期待できない以上、声を挙げざるをえません。後から伺いましたが、真間川や里見公園の桜が守られたのは快挙でした。しかし2年前に散歩の通り道のイナリザク公園の2本の欅のうち1本が伐られることになったため、反対運動、署名活動の結果、移植したのは良かったのですが直ぐに枯れ、国分寺参道近くの国分斜面林が予告もなく伐採され、ジュンサイ池から小塚山に続く樹林の道路際の喬木が何本も伐採され、昨年は堀之内公園のハリエンジュ12本が里山クラブの要請で公園緑地課が許可して伐られ、30年前の運動で折角保存した斜面林でも、ナラ枯れを理由に未だ枯れていない元気な樹木が伐り倒されていきました。ナラ枯れは手当てをして蘇らせる方法を公園緑地課に申入れストップさせましたが、その直後に第4緑地の少なくも5本の大木が、又してもナラ枯れを理由に、伐られました。住民が声を挙げてもこの始末です。こうやって少しづつ少しづつ憑かれたように伐られた樹木の累積を数えればこの4,5年で100本を優に超えるでしょう。北国分の風致や豊かな緑は見る影もなく毀損されました。

「市川市自然環境保全再生指針・2006」「生物多様性市川戦略・2014」なる文書が有識者によって作られていますが絵に描いた餅のまま眠っています。生物多様性を追求する国際潮流を受け、政府の立てた方針に従ったものですが、生き返らせなければなりません。地球温暖化防止・カーボンニュートラルの同じく、国連の動きに連動した日本政府の指針が立てられました。CO2の吸収源の大部分は森林の吸収量です。植林などの緑化運動が低炭素社会の実現を目指すには極めて重要になっていることを再生指針に織り込むなどして、早急に市川の自然を保護しなければ依然として、緑が失われ続け、貧しく魅力のない住みにくい地方都市に落ち込んでしまいます。

開発が正しく善であると無邪気に思い込んでいる人々によって貴重な樹木が容赦なく伐られているのです。彼らを啓蒙し、一般住民、関係当事者の意識を広報活動によって、正しい方向に変えることがいま何より求められています。

東京都でも、再開発によって神宮外苑や日比谷公園の樹木を大量に伐採し、高層ビルの建設が予定されています。小池都知事らに「先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」と訴えた坂本竜一の手紙が話題を呼びましたが、さて、小池さん、どう反応するのでしょう。田中市長、あなたは市川の緑と魅力を本当に守る覚悟がおありなのでしょうか。

産経新聞記事転載2021.12.17

首都高と東北道結ぶ新高速道路 埼玉県などが検討会

埼玉県南部で慢性化している幹線道路などの渋滞の緩和を図るため、首都高速道路埼玉新都心線と東北自動車道を結ぶ新たな高速道路の整備構想が浮上している。国と同県、さいたま市が検討会を発足させ、具体的なルートなどに関する議論に着手した。

検討会では、新たな高速道路の始点を首都高埼玉新都心線のさいたま見沼インターチェンジ(IC、さいたま市緑区)、終点を東北道の岩槻IC(同市岩槻区)から浦和IC(同市緑区)の間と想定している。オブザーバーとして東日本高速道路と首都高速道路が参加しており、道路の規模や工法などについても話し合う。

想定エリアには大規模緑地「見沼田んぼ」(さいたま市、川口市)があるため、環境保全への配慮や地域住民の理解を得るための取り組みも課題となる。

埼玉県南部では、平成30年に東京外かく環状道路(外環道)の三郷南IC(三郷市)から高谷ジャンクション(JCT、千葉県市川市)の区間が開通したことで交通量が増え、渋滞が深刻化している。東京都心に近いことを背景に人口が集積して物流施設が増えていることもあり、状況はさらに悪化する可能性がある。

検討会の関係者は、混雑緩和は「喫緊の課題」だと強調し「国際競争力の強化や地域活性化に資する新たな道路ネットワークを検討したい」と述べた。(中村智隆)

調布市 道路陥没事故

三鷹連絡会の方からのメールです。

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「市民による外環道路問題連絡会・三鷹」のメール通信です。
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いつもありがとうございます。

2020年10月18日、調布市の住宅街で、道路が陥没する事故が起きました。
この場所の地下では、外環道路のトンネル工事が行われていたのです。

http://www.gaikangaikan.info/blog/?p=2421

住宅の目の前の道路に、突然、5.2m×2.9m、深さ5mの穴があき、
近隣の住人に、避難が呼びかけられました。
けが人はいないとのことですが、利用者の多い道路であり
人命にかかわる事故が起きてもおかしくない状況でした。

トンネルが掘られたのは、1ヶ月前。
そのときから周辺には、外壁の落下、亀裂、地盤沈下、騒音振動などの被害があり、
調布市には100件以上のクレームが寄せられましたが、
事業者は解決に向けた対応を、何もしてきませんでした。

これからトンネルが掘られる地域はもとより、
既にトンネルが掘られた地域でも安全とはいえない状況となりました。

マスコミ各社が、全国ニュースとして報道しています。

NHK ニュース
「東京 調布の住宅街で道路が陥没 トンネル工事との関連を調査」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201018/k10012669591000.html?utm_int=news_contents_news-main_005

テレビ朝日 ニュース
https://www.youtube.com/watch?v=iSop17OT46Y

これまで、私たちは、
1. 何万人もの人が住む市街地の真下に、巨大トンネルをつくろうという「外環道路」は
無謀で危険な事業である。
2. 地下水の影響で地盤陥没や隆起が起こる可能性が高く、
3. 事故が発生すれば、市民の命の危険や財産の毀損など大災害に直結する

ことを繰り返し指摘し、事業を中止することを強く求め続けててきました。
私たちの危惧していたことが 現実のものとなりました。
私たちはさらに、外環道路事業の危険性を明らかにし、中止を求めていきます。